ある旅人の物語。

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一人旅クエストを訪れた旅人の言葉が刻まれたほこら


 

 

ある旅人の物語。


 

 

 

戯言議事録

謎のままでいいものもある。

 

ある旅人の物語。


 

しばらく滞在していた海外から帰国した時、祖母の痴呆は進んでいた。
空を見つめながら延々と存在しない何かと会話をし続けるお婆ちゃん。

 

混乱しているお婆ちゃんの前に三十路前後だった孫の自分がもたれかかる。
イライラしていた祖母の表情が柔らかくなり、お婆ちゃんは自分の頭を静かに撫でてくれた。

 

 

「うん、行ってみよう」

 

 

祖母が生まれ育ったのは秋田県のとても田舎の集落だった。

その頃、一眼レフに夢中だった自分は祖母の故郷の写真を撮って見せてみたいと思った。

 

バイクが一台。
それも通勤に使っていた125ccのスクーター。

一眼レフに夢中だった気持ちと、もうひとつ、もう二度と見ることなく逝ってしまうであろう祖母に故郷の景色を自分の手で。

 


 

祖母が他界してから何年も経った。

その後、海外を歩きたいと時々思っていたいたことはあっても、日本の遠くの土地を一人で行く事は数年間全くなかった。

 

何を気にしていたんだろう?

2013年の夏、30代後半に入った時、何かを吹っ切るようにあの時のスクーターの整備を整えた。

 

まずはさ、日本でいいじゃん?

24時間走り通し、本州の最北端に到着した時、人生初めてのキャンプ場のテントの中でつぶやいた。

『「一生懸命頑張る」だけで一生終わってたのかもしれないな。』

 

小学生の頃、・・・そう、まだ世の中にスマホやケータイはもちろん、ポケットベルもなかったころの小学生の話。

ファミコンやドラクエはあったけど、「ゲームブック」っていうジャンルの本があった。

インターネットもない時代、本を開く。

 

ある程度読み進めていくと選択肢が出てきて、そのページに進むと、敵や幽霊が出てきたり、武器をGET出来たり「冒険」できるのだ。

今は「ゲーム」として溢れているモノだけど、文字と時々入る挿絵の「本」だけでその世界観をいくつも楽しむことができた。

 

昔好きだった「ゲームブック」を思い出した。

 

 

さあ、未来を救う何かを探しに気が向いた時はどんどん一人旅を進めていこう。

 

 

2014年 記

 

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